羽 衣
脚注 静岡市シティプロモーション
三保松原を舞台とする羽衣伝説は、15世紀に作られたといわれる謡曲「羽衣」によって一躍有名になりました。簡明かつ幻想的な「羽衣」の物語は、その後、長唄、筝曲、舞踊、浮世絵、歌舞伎などを通じて庶民に広まり、近代になると、教科書や唱歌にも採り上げられました。江戸時代の街道整備以降、三保松原は、富士の眺望とともに、日本の美を象徴する場所として誰もが訪れてみたい人気の観光地となりました。
日本各地に広く残る羽衣伝説は、世界に分布する白鳥処女説話に類似し、衣を奪われた天人が人間の男と結婚するというものが一般的です。その中で、謡曲「羽衣」は、三保松原における春の日のたった一日の出来事を題材としています。天女が発した「いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを(地上の人間は嘘をつくが天人はつかない)」という台詞や東遊(あずまあそび)の駿河舞を舞い富士の高嶺の大空の霞の中に消えていく三保松原の持つ神秘性が、日本のみならず、世界中の多くの人々を魅了してきました。